デリヘル増加の背景。
デリヘル急増は風俗規制の影響
昨今の風俗業界の動向というと、店舗型から派遣型へと急速に移行しつつあります。
デリヘルの増加数の推移を見てみるとわかるのですが、年間で1300軒~1500軒もの新規デリヘル店が開業していて、まだまだその勢いは衰えていません。
それに伴いデリヘル店を利用するという客層も増えていて、今後ますますデリヘル店の増加に拍車がかかるものと予想されます。
今の日本では、店舗型風俗にはかなり厳しい規制がかけられています。
出店制限を始め、新築どころか改築すら認められておらず、もし店舗を勝手に改修したりすると営業許可を取り消されてしまいます。
そういった様々な規制をかけることで建物の老朽化や新規出店を妨げ、最終的には建造物の老朽化で安全性が確保出来ないなどの理由で、合法的に営業許可を取り消すことが出来るというわけです。
そこで、現在店舗を運営している業者の中には、早いうちに店舗型のヘルスやソープなどから派遣型のデリヘルへと店を移して営業しているところもあります。
デリヘルの方が店舗維持などもコストが掛からないので業者側にもメリットがありますし、利用者側も電話一本で店まで行く必要がありません。
両者にメリットがあるということですから、昨今のデリヘル増加にも納得がいくというものです。
ところで、デリバリー型ファッションヘルス(通称・デリヘル)という性風俗が誕生したのは比較的新しい。
2000年代以降である。当時(2003年)の東京都知事・石原慎太郎が、警察官僚だった竹花豊を副知事として招聘。「歌舞伎町浄化作戦」と称する大規模な風俗店摘発を開始した。いわゆる「ショバ代」や「みかじめ料」などが、暴力団の資金源になっているという理由からだ。
「歌舞伎町浄化作戦」がなし崩し的に方向転換
ところが直後から始まった東京オリンピック招致運動(このときはリオデジャネイロに敗れ、東京開催は2020年に)と、いわゆるインバウンド消費を見込んだ観光立国化推進によって、「歌舞伎町浄化作戦」はなし崩し的に方向転換してしまう。
つまり「外国人観光客に見られて恥ずかしい、下品で淫らな看板を置かせない」という方針となった。
そこで店舗型の風俗店には厳しい規制が敷かれたのと裏腹に、無店舗型に対しては、野放図なほどに寛容な姿勢を見せたのだ。
結果デリバリー型(デリヘル)の風俗店が、爆発的に増加することになる。
女性が客の元へ出向く性風俗は、デリヘルから始まったわけではない。
1980年代から流行り始めた、デートクラブというものがその起源としてある。
これは東京でいえば赤坂プリンスやホテルオークラなど、一流ホテルに客が部屋を取り女性を呼ぶという、まさにバブリーな遊びであった。
ただしデートクラブは現在でも健在だ。富裕層の男性相手に「会員制」を謳い、女性に対しても「安心」と「高額収入」をアピールしている。
中にはホームページにて「男性は年収4000万円以上のセレブ限定」「貴女も本物のレディとして、シンデレラストーリーを紡いでみませんか?」などと書いているところもある。まさに映画『プリティ・ウーマン』の世界である。
しかし現在のデリヘルの主流は、その対極に位置する。つまり風俗業界もまた格差社会なのだ。
デフレスパイラルがしきりに言われるようになった2010年代から、デリヘルは急速にダンピングが進む。
元祖激安ヘルスと呼ばれ、業界最大手でもある「サンキューグループ」などは、その名の通り「30分3900円」という低料金を掲げている。
価格の安い店が増えると、自由になるおカネが少ない大学生や、独身サラリーマンなどが自宅に嬢を呼ぶようになった。そうすればホテル代もかからない。
デリヘルは基本的に「本番行為」は禁止だが、逆に言えば「セックス以外ならOK」でもある。
気に入った娘ができてリピートすれば、まるで彼女が自宅に遊びにきてくれるような感覚を味わえるわけだ。このようにデリヘルはカジュアル化し、都市の隅々にまで広がった。これによってデリヘルドライバーという存在が、ますます求められるようになったわけだ。